小浦 誉史
IT企業の財務チームにてファイナンス関連業務に従事しています。2013年に日商簿記検定1級に合格。
なぜ経理のアウトソーシングで失敗する?
経理のアウトソーシングで失敗しないためにできることは?
経理業務のアウトソーシングは、多くの企業がコスト削減や効率向上を目指して採用する手法の一つですが、一方でその決断には慎重さが求められます。
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ここでは、経理のアウトソーシングに伴うデメリットについて具体的に掘り下げます。
経理業務のアウトソーシングにおいて最も懸念されるのが情報漏洩のリスクです。
経理部門は企業の財務データや機密情報を取り扱うため、これらの情報が外部の第三者に管理されることは、情報が意図しない形で漏洩する可能性を高めます。特にデジタル化が進む現代では、データセキュリティが不十分な業者を選んでしまうことで、サイバー攻撃の対象になる可能性もあります。したがって業者選定においては、十分なデータセキュリティ対策が施されているか、情報保護ポリシーが明確かを確認する必要があります。
外部の業者に経理業務を依頼することで、一律のサービス提供となることが多く、企業独自のニーズに応じた柔軟な対応が難しいケースがあります。
特に、自社の業務プロセスや経理基準が特殊である場合、標準的なサービスに当てはまらない可能性があります。このような場合、アウトソーシングによって業務プロセスの調整が困難になり、本来の目的である業務効率の向上が逆に達成されにくくなることもあります。しっかりと業者との間で期待値を調整し、必要であればカスタマイズサービスを提供できる契約内容を取り決めることが重要です。
短期的には経費削減の効果を期待できるアウトソーシングですが、長期的に見た場合、削減効果が曖昧になる場面があります。
外部委託にかかるコストや追加費用は、事前の見積もりからズレが生じることも珍しくなく、契約更新や業務内容の変化に伴い費用が加算されていく可能性があります。さらに経理情報を外部に委託することによって、自社内でのノウハウの蓄積が難しくなるという側面もあります。これにより、将来的に自社での経理体制の再構築を図る際には時間とコストがかかる可能性があります。したがって、長期的な視点でのコスト効果を踏まえた上で、経理業務のアウトソーシングを評価することが求められます。
自社スタッフと外部との連携はとても重要です。「外注すれば万事解決」ではなく、デメリットも考慮して計画的にアウトソーシングを進めたほうが無難だと思います。
経理のアウトソーシングと言えば、コスト削減や効率化を期待して検討されることが多いですが、一部では「やめとけ」と言う意見も耳にします。
主な理由は以下のとおりです。
外部の業者に業務を委託するということは、それだけ情報伝達が重要になります。情報の不備や理解の不足があると、業務の齟齬が生じ、結果としてミスやトラブルを引き起こすことがあります。
選定の際は、価格だけに目を向けて選んでしまうと、本来求めていた品質が得られない場合があります。業者の実績や信頼性を十分に確認し、自社のニーズに合ったパートナーを選ぶことが重要です。また、アウトソーシングを行うことで、何がどのように進行しているのかが見えづらくなることがあります。このため、定期的なレビューや進捗報告を求め、業務の透明性を保つことが求められます。
さらに、経理業務のアウトソーシングに対する理解と受け入れが社内で進んでいないと、協力的な体制が構築できず、円滑な業務進行が妨げられる可能性があります。アウトソーシングの目的や利点を社員にしっかりと説明し、理解を促すことが必要でしょう。
たしかにネガティブな声もありますが、すでに経理の現場が混乱している企業の場合は、外注することによるメリットのほうが大きいと思います。
全てのアウトソーシングが成功するわけではなく、失敗例も少なくありません。
実際の失敗体験を基に、アウトソーシングで陥りがちな問題を考察しましょう。
A社は、経理業務を外部業者にアウトソーシングし、業務効率の向上と専門家によるサポートを期待していました。しかし、プロジェクトの途中で大幅な遅延が発生しました。
具体的には、ある月末の決算処理時、A社の現場では急遽、予算管理に関する報告書のフォーマット変更が必要になりました。しかし、その変更がアウトソーシング先に適切に伝わらず、従来のフォーマットで処理が進められてしまったのです。その結果、締め切り直前になって報告書が誤った形式であることが発覚。急いで修正対応を依頼しましたが、業者側は他のクライアントの対応に追われており、即座に対応できるリソースが足りませんでした。
このコミュニケーション不足によって、最終的に決算処理が数日遅れ、経営層への報告も遅延。A社は信頼を損ねる結果となりました。
B社の場合、アウトソーシングを開始することでコスト削減を目指していました。社内リソースを削減し、外部に業務を委託することで人件費を下げる計画でしたが、結果として期待していたようなコスト削減にはつながりませんでした。
主な原因の一つは、不透明な追加料金が発生したためです。業務範囲が明確に決まっておらず、後から追加で依頼する作業に対して高額な料金が請求され、結局予算オーバーとなりました。
C社では、アウトソーシングにより業務効率を向上させることを目標にしていましたが、実際には逆に業務効率が低下するという結果に終わりました。
その主な要因は企業文化とアウトソーシング先の文化が合わなかったことです。特に、業務の進め方や問題解決の手順が異なるため、アウトソーシング先と社内のチームとの間にギャップが生じ、その結果として意思決定のプロセスが遅延しました。
「結果として手間が増えた」ケースは経理業務に限らずよくある話だと思います。ただ、外注することを決めた後の業者選定を慎重に行えば回避できるはずです。現場の声を聞きながら選定を進めると失敗しづらくなるのではないでしょうか。
経理業務のアウトソーシングを成功させるためには、まず社内でしっかりとした準備を行うことが重要です。
アウトソーシングを検討する際に最初にやるべきことは、自社の経理業務を詳細に把握することです。具体的には、現在の業務フローを整理し、どの業務を外部に委託するかを明確にします。このプロセスが明確でないと、後から齟齬が生じやすくなるだけでなく、パートナー企業との連携において問題が起こりやすくなります。 もう一つは、アウトソーシングの目的を明確にすることです。コスト削減を目指すのか、それとも専門性の高いサービスを求めるのか、目的に沿ったパートナー選びが求められます。目的を明確にしないと、ただ安価なサービスを選んでしまい、結果的に品質の低下やトラブルの原因になりかねません。
信頼できるアウトソーシングパートナーを選ぶことも非常に重要です。
経理業務は企業の内部情報を扱うため、信頼性が低いと情報漏えいや不正が発生するリスクがあります。パートナー選びの際には、まず実績を確認し、他の企業の評判や口コミを参考にします。実績が豊富で信頼性の高い企業であれば、安心して業務を任せることができるでしょう。 また、アウトソーシング業者との連絡体制をしっかりと構築することも大切です。トラブルが発生した際に迅速に対応できるよう、明確なコンタクトポイントを設定しておくこと、定期的な打ち合わせを行って情報共有を怠らないようにしましょう。
プロジェクト管理を徹底することが成功の鍵です。
アウトソーシングを開始する際には、KPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的に成果を評価します。これにより、問題がないかを早期に発見することができ、必要な改善策を取ることができます。また、インボイスの確認や支払いのタイミング、品質管理など、日々の業務の流れをしっかりと監視することも忘れてはいけません。また、アウトソーシング業務におけるリスクマネジメントを考慮し、契約書をしっかりと確認することが大切です。特に、契約解除の条件やトラブルが発生した際の手続きについては、事前によく確認し、様々な事態に柔軟に対応できるようにしておきましょう。
選ぶ時・始める時・運用する時、それぞれで注意点があるので、段階を踏んで計画を進めると失敗しづらくなるはずです。
経理のアウトソーシングは、企業にとって大きな変革の一環であり、慎重な計画と管理が必要です。ここで挙げた失敗事例を参考に、自社に適したパートナー選びや業務プロセスの見直しを行いましょう。適切なアプローチを取ることで、アウトソーシングの成功を実現し、企業の持続的な成長に寄与することができるでしょう。
他社の失敗事例を知ること、対策を練ること。更には失敗しても立て直せるようにすることなどが重要かもしれません。経理は継続業務で終わりがないので、長期計画のもと、外注を実行するとよいと思います。