小浦 誉史
IT企業の財務チームにてファイナンス関連業務に従事しています。2013年に日商簿記検定1級に合格。
中小企業において経理がずさんになりがちな原因は?
ずさんな経理を改善する方法は?
中小企業の経理は、ときにずさんになり、そして大きな問題を引き起こします。 この記事では、中小企業の経理がずさんになるケースについて、その原因と解決方法を紹介していきます。
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「経理がずさんだ」と聞くと、つい担当者の能力不足や怠慢を疑ってしまいがちです。しかし実際には、会社の仕組みや体制そのものに原因が潜んでいることがほとんどです。
特に中小企業では、人員・経営者の理解・業務プロセスの整備不足といった3つの要因が重なりやすく、それが経理の精度を大きく損なうのです。
多くの中小企業では、経理を担当できる人が一人しかいない、あるいは他の業務と兼務しているという状況が一般的です。こうなると、次のような問題が連鎖的に発生します。
業務が一人に集中し、属人化する
ダブルチェックができず、ミスや不正を見逃す
過重労働で担当者が疲弊し、離職につながる
例えば、経理担当者が突然退職すれば、残された社員は帳簿のどこに何があるのか分からず、業務がストップする可能性があります。日常的な小さな入力ミスも、チェック体制が弱ければ放置され、やがて税務調査や融資審査で大きな問題となるでしょう。
もう一つの大きな原因は、経営者の意識です。経理を「お金の出入りを記録するだけの仕事」と軽視している経営者は少なくありません。
しかし、経理データは 経営判断や事業戦略の根拠 となるもの。売上や利益の数字だけでなく、資金繰りやコスト構造を把握するためにも欠かせません。
経営者がこの点を理解していないと、
経理部門への投資が後回しになる
人材教育に力を入れない
経営会議でデータを活用しない
といった状況になり、結果として企業全体の成長を妨げてしまいます。
さらに、中小企業では経理業務の仕組みが整っていないケースが多くあります。
手書き伝票やExcel入力が中心でミスが頻発する
集計や報告が正確でなく、経営判断に必要なデータが揃わない
同じ情報を何度も入力するなど、無駄な作業が横行する
たとえば「請求書の控えをExcelに転記→別の担当が紙にまとめ直す→さらに別フォーマットに入力」といった重複作業は、効率を下げるだけでなく、数字の食い違いを生み出す温床にもなります。
こうした非効率なプロセスを放置すると、経営のスピード感に追いつけず、競争力を失ってしまうリスクもあるのです。
中小企業で経理がずさんになってしまうのは、単なる担当者の問題ではなく、人員不足・経営者の理解不足・プロセス未整備という3つの構造的な要因によるものです。これらが重なることで、些細なミスが重大なトラブルへと発展しやすくなります。
やっぱり中小企業だと、経理業務はブラックボックス化しやすいんです。現場や経営者の意識が低ければかんたんにずさんな運営になり、いずれ取り返しのつかない方向へと進んでしまいます。
「経理がずさんだと危険」と頭では分かっていても、実際にどのようなトラブルが起こるのか、イメージが湧きにくいかもしれません。ここでは、中小企業で実際に起こった経理上のトラブルを4つ紹介します。いずれも身近なケースであり、他人事では済まされません。
ある製造業の会社では、小口現金をベテラン社員が長年管理していました。経験豊富だから大丈夫だろうと任せきりにしていた結果、融資申請のタイミングで銀行に提出した資料と実際の残高が大きく食い違っていることが判明。
調査すると、支出記録の一部が抜け落ちており、私的利用の疑いまで浮上しました。最終的に融資審査は一時保留となり、資金繰りに深刻なダメージを与えました。
教訓
小口現金は必ずデジタル化する
定期的に二重チェックを行う
「長年やっているから大丈夫」と思わない
サービス業の企業で、未経験の担当者が給与計算をしていたケースです。給与から源泉所得税を控除しないまま支払っていたことに誰も気づかず、数年が経過。
税務調査でこの不備が指摘され、多額の追徴課税とペナルティが発生。予定していた新規事業への投資資金をすべて失い、経営計画の見直しを迫られました。
教訓
給与計算は必ず専門知識が必要
給与計算ソフトを導入する
税理士など外部専門家に定期チェックを依頼する
建設業のある企業では、経理担当の交代時に引き継ぎ資料がほとんど残されていませんでした。新任担当者は「とりあえず前任者のやり方を真似る」しかなく、請求書の支払い漏れや売上計上の遅れが続出。
結果、取引先からの信用を失い、一部契約を打ち切られるという大きな痛手を負いました。
教訓
経理業務はマニュアル化する
引き継ぎの仕組みを必ず整備する
業務フローをチームで共有し、属人化を防ぐ
飲食店を運営する会社で、経営者が個人の買い物や家族との外食を「接待交際費」として処理していました。本人に悪気はなく「会社のカードを使えば便利だから」という感覚だったのですが、税務調査で不当経費と判断され、多額の追徴課税が課されました。
さらに社員からも「社長は会社のお金を私的に使っている」という不信感が広がり、士気が下がる結果に。
教訓
個人と会社の口座をきっちり分ける
経費精算は第三者チェックを通す
経営者自身が透明性を示す姿勢を持つ
これらの事例から分かるように、経理の不備は「資金繰り悪化」「税務リスク」「信用失墜」「社員の不信感」など、会社の根幹を揺るがす問題につながります。
融資のタイミングは自社で問題に気づくよいきっかけです。また、確定申告時は外部からメスを入れられることが多いタイミングです。少しでも早く是正することが経営への影響を小さくするので、わからないまま放置せず、積極的に外部に相談しましょう。
前章で紹介した事例からも分かるように、経理の不備は企業にとって深刻なダメージを与えます。しかし裏を返せば、早い段階で適切な対策を講じれば、トラブルを未然に防ぎ、経理を「会社の強み」に変えることができるのです。
ここでは中小企業が取り組みやすい改善策を整理します。
経理業務が属人化すると、ちょっとした異動や退職で業務が止まってしまいます。これを防ぐには、業務の流れを定期的に見直し、マニュアルやチェックリストに落とし込むことが重要です。
担当者の役割と責任を明確にする
月次や年次のスケジュールを整理し、可視化する
定期的にマニュアルを更新し、誰でも業務が引き継げる状態にする
さらに、月1回でも経営者と経理担当者が顔を合わせて現状を共有する場を設けると、データの透明性と精度が大幅に高まります。
人員が限られている中小企業にとって、クラウド会計ソフトは強力な味方です。仕訳や集計を自動化し、入力ミスや作業負担を大幅に軽減できます。
比較項目 | マネーフォワードクラウド | freee | 弥生会計オンライン |
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主要な特長 | データ自動取得・自動仕訳、11サービス一括提供 | AI自動仕訳、リアルタイム経営分析、統合業務機能 | 簿記不要、直感的操作、仕訳・記帳自動化 |
料金プラン(月額) | ¥2,980〜(税別、スモールビジネスプラン) | ¥2,980〜(税別、ひとり法人プラン) | 無料(1年間)その後¥2,316〜(税別) |
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対応業種・規模 | 小規模事業者〜IPO準備中企業まで | 個人事業主〜大企業まで | 中小企業、小規模法人、個人事業主向け |
特徴的な機能 | 金融機関2,300以上と連携、ワンクリック決算書作成 | 領収書スキャン・OCR連携、請求書・支払管理 | 金融機関2,500以上と連携、POSレジ・スマホアプリ対応 |
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インボイス対応 | 完全対応 | 完全対応 | 完全対応 |
データ移行 | 他社ソフト・Excelからインポート可 | 他社ソフトや銀行口座データ移行サポート | CSV形式で簡単移行 |
セキュリティ | SOC報告書提供、暗号化、サーバーアクセス制限 | 金融機関レベルのセキュリティ、1ヶ月前までのバックアップリストア | Microsoft Azure採用、暗号化通信、日々のバックアップ |
連携サービス | 銀行、クレカ、POSレジなど多数 | 銀行120社・金融機関923社と連携 | 2,500以上の金融機関、POSレジ、請求書サービス |
すべてを社内で抱え込む必要はありません。むしろ中小企業こそ、専門家の力を借りることでリスクを回避できます。
税理士による月次・年次のチェック
経理コンサルタントからのアドバイス
アウトソーシングによる業務代行
特に、税務や法改正は知識がないと追いつけません。外部の知見を借りることで、安心感も増し、経営に集中できる環境が整います。
改善の最後のカギを握るのは経営者です。経営者が経理を「未来の経営判断のためのデータ」と認識することで、会社全体の意識は変わります。
月次レポートを経営会議に活用する
経理担当者と定期的に面談し、課題を共有する
「経理は経営の基盤」というメッセージを社員に伝える
トップが関心を持ち、データに目を通すだけで、経理の質は格段に向上します。
中小企業さんの中には、問題が長期化して、取り返しのつかない事態を招いた会社もあります。経営者や現場の担当者が限界を感じたら、少しでも早く外部に相談したほうがよいでしょう。
中小企業の経理がずさんになるのは、怠慢ではなく「人手不足」「知識不足」「仕組み不足」が原因です。放置すれば、融資・税務・信用・社員の士気にまで悪影響が及びます。
逆に言えば、早めに対策を打てば経理は「会社を強くする武器」に変わります。もし少しでも不安を感じたら、まずは業務の棚卸しや外部相談から始めてみてはいかがでしょうか。
経理はコストではなく、未来の成長を支える投資です。『経理を整えることは、会社を育てること』。その意識を経営者が持てるかどうかが、長期的な成長の分かれ道になるんだと思います。